ITシステムにおけるアーキテクチャについて

ITシステムは、ほうっておくと混沌の海に沈むことになる。アーキテクトは、システムが複雑になりすぎないよう、常にシンプルに保たれているように、常に心がけておく必要がある。

複雑さが増していく要因は、個々の要件に対する個別的な対応が積み重なることにある。変更要求やインシデントなどの起因となる要件に対して、コスト要因、構築中の環境遷移・テスト要件などで、「こうすればこうできる」、「このためにはこうすれば良い」という技術的な判断を個別に行うことで、機能的には個々の要件を実現できるものの、全体として複雑さが増してしまうことがある。

技術的な決定を下すに当たっては、「できるかどうか」だけではなく、以下のような観点を踏まえて、「やってよいか」という評価を実施する必要がある。

  • 技術的構成要素が増えないか
  • 後続フェーズでの保守体制・コストの増加要因にならないか
  • 既存のアーキテクチャの連続線上に存在するか
  • 既存の他システム実績があるか(もしくは、他システムでも流用可能な仕組みか)
  • 局所的な例外要素とならないか
  • 普通はどうするものなのか

そのためには、システムのTCOに責務を持つステイクホルダーに対して、トレードオフ(Pros&Cons)を提示して意思決定してもらうように計らう必要があるかもしれない。なぜならば、現場の担当者は、全体最適に対して、局所的な責務しか帯びていないことがあるからだ。例えば、構築・更改案件の初期投資コストに対してのみ責務を負っており、その後の保守・運用フェーズへの技術的負債の蓄積による負の影響についてはスコープ外となっているような場合が挙げられる。

アーキテクティングは、「あれも、これも」できるようにすることではなく、「あれか、これか」を選択して制約を設けることである。

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ITシステムにおけるツールの利用について

システム構築・維持保守では、様々なツールが使われる。ツールを適用する目的は、品質と効率の向上だろう。

例えば、アプリのリグレッションテストや負荷試験は、何度も繰り返し実施されることながら、人手でなんとかしようとすると、莫大なコストと期間がかかるため、ツール適用の効果が大きい。 そのため、かなり初期からツール適用が進んでおり、継続的インテグレーションやDevOpsの名の下に、デプロイメントパイプラインを設けて一気通貫の自動化を進め、アプリだけでなく、インフラの設定・構築も、その仕組みに乗せて管理しようという方針が進んでいる。

この辺りにツール適用して効果を高めるためには、テスト環境準備(アプリデプロイ、データ準備)、テスト実施、結果評価の、一連のプロセスを自動化することが重要なのであり、利用を始めてからPDCAサイクルを回して使いこなしていく過程が重要となるのだが、そもそも、ツールに対する取り組み姿勢が大前提になる。

ツール適用に当たっての議題は、当該ツールの機能もさることながら、どう使うかが大半だ。

企業の規模、システム部の規模が大きくなればなるほど、参画人数が多く、マルチベンダーの体制になる。

規模が小さい場合は、まず、ツールを適用するところから始めれば良いが、規模が大きくなればなるほど、やがて、効果が上がらなくなる。

初期には、ツールのライセンスをプールし、当該ツールを実行するための常設基盤を提供して、複数チームで共有する体制を設けることから始めれば良いが、やがて使いこなせず、期待した費用対効果が得られないという課題が明確になる。

次のステップとしては、以下の責務を持つチームを、内製化体制として設けることが望ましい。

  • 当該ツールを使いこなすためのガイドやアセットをメンテナンスして利用チームに対して技術支援する
  • 利用実績を踏まえてガイドやアセットをブラッシュアップしていく
  • 有効に活用されているかどうかを評価して、活用度が低い場合には、有効に活用してもらうための追加の取り組みを検討して実施する

逆に言えば、そういう体制やプロセスを設けずに、複数のチームで共有できるライセンスプールとランタイム環境を提供するだけでは、ツール適用の効果である、品質と効率の向上は期待できない。

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ITシステムの基盤更改への取り組みについて

業務システムは何れ、基盤更改というプロジェクトに取り組むことになる。その契機は、ハードウェアやソフトウェアのサポート・保守切れ対応になる。

従って、この世の中で最も多いタイプのSIプロジェクト型と言えると思う。

基盤更改で最も問題になるのはコスト。業務サービスの継続性・安定稼働は大前提だが、業務要件を契機として始まる案件ではないため、投資よりも経費寄りの案件と言えるため、コストが問題になることが多い。

基盤更改案件で最も大きなコストになるのは、最低限度、購入する必要があるハードウェアやソフトウェア以外では、業務アプリのリグレッション試験のコストが最大になる。基盤更改プロジェクトの成否は、アプリのリグレッション試験を、どれだけ広く・深く実施できるかに掛かっていると言って良いと思う。

歴史を遡ると、まずは、オープン系のシステムが実装され始めた2000年代前半。初期に構築されたオープン系システムが5-7年経過して、基盤更改のタイミングを迎えるようになった頃。

当時は、「基盤のハードウェア・ソフトウェアだけを入れ替える、アプリへの影響は極力最小限度にする」、というポリシーが採用されることがあり、仮にアプリ更改要件があっても、「まず基盤更改先行し、追ってアプリ更改する」、という、基盤とアプリのタイミングをずらす方針が採用されたことがあった。その理由には以下のようなものが挙げられると思う。

  • 当時はまだオープン系のシステムは今ほど多く・複雑でもなかった。
  • システム部要員がメインフレーム経験に基づいていた。

メインフレームは、シングルベンダーによる垂直統合型で実装されている。ハードウェアとソフトウェアが、特定のベンダーによって実装されており(もしくは互換機ベンダー)、後方互換に対して高い互換性が維持されていた。数十年前にコンパイルされたバイナリモジュールがそのまま動作することが求められており、仕様はかなり詳細なレベルで明記されている(IBM社の「Principles of Operation」など)。

そのため、メインフレームの基盤更改の場合は、「アプリはほぼ変更せず、本業務稼働環境の横で別途構築された更改後のシステムに、本業務データを流し込んで、一定期間現新並行稼働させて、出力データに差異がないことを確認してから本番Go Liveする」という方式をとることができる。

上記の方針をオープン系のシステムにおいても採用しようとした基盤更改の取り組みが、2000年代前半に行われることがあったが、残念ながら、大きな問題を引き起こすことになる。その要因としては以下のようなことが挙げられる。

  • オープン系のシステムは、メインフレームと違って、ハードウェア・ソフトウェアの各スタック階層で、マルチベンダー実装が混在する。
  • スタック階層間のインタフェースレベルの整合性は何とか保たれるものの、振る舞いレベルの互換性の維持は困難。
  • オープン系では、メインフレームのように数十年前のプログラムに対する後方互換性よりも、機能追加の多さ・速さが求められていたため、後方互換も無視するわけではないが、注力する比率が相対的に低かった。
  • 実装が準拠する仕様が日進月歩で変化していったことで、仕様に準拠して振る舞いが徐々に変化していった。
  • 日進月歩での機能追加競争の中で、更改前はバグによって振舞っていた動作が、更改後は修正されて振る舞いを変えるということが発生する。
  • 明記された仕様に基づかない暗黙的な挙動が変更される。

その結果、アプリのリグレッションテストは、メインフレームのように、「完全に同じものを流せば同じ結果になる」というわけにはいかず、「入り口と出口だけ確認すればよい、差異が生じることは例外で、各々に対処すればよい」とはならなくなった。全画面・全帳票・全バッチの機能確認試験および、性能試験・障害試験・運用試験を、人系のインテリジェントな判断を前提として実施する必要があり、システムの規模・複雑度が拡大するにつれて、コストと期間が、幾何級数的に拡大していった。

上記の経緯で早々に破綻した結果、各企業では、基盤更改は莫大なコストが掛かることから、投資案件となる要件、すなわちアプリ更改とタイミングを合わせて実施することが多くなった。

アプリ更改でも、基盤更改でも、プロジェクトのコストの大半はテストに費やされる。「どうせコストが掛かるのであれば、両方を一緒のタイミングでやって、テストに掛かるコストを相殺しよう」、ということだ。

その結果、基盤更改のプロジェクト計画では、以下のようなことに注意が払われるようになった。

  • システム部予算の中期計画・長期計画で、基盤更改予定時期に合わせて、アプリ更改を計画する。
  • 基盤更改の目的は、製品保守切れ対応ではなく、現行維持保守課題の棚卸しと位置づけて、案件の計画時に、ユーザー部・基盤チーム・アプリチーム・運用チームの課題の洗い出し・吸い上げに注力する。(保守が切れることも維持保守課題の1つ。)
  • 経営課題は、アプリ更改にタイミングを合わせて、とりまとめと対策検討を行う。

とは言え、オープン系システムの規模と複雑さが拡大の一途を辿っている一方で、コスト削減の圧力が高まっていることから、以下のような取り組みも平行して行われている。

  • テスト自動化ツールの利用
    • リグレッションテスト
    • 負荷試験
    • 本業務サービス状況のキャプチャと、テスト環境での再生
    • CIツール
  • Webフロントなどのミッションクリティカル以外のシステムでのパブリッククラウド(XaaS)の利用(AWS, Azureなど)
  • 各種のSaaSの利用(Salesforce、サイボウズなど)
  • 初期投資コストは最小限度にしてシステム構築し、1/Nスケールのシステムでの負荷試験実績に基づいて、本業務環境で必要なリソースを追加調達する。

上記は2010年頃までには成熟していたことであるため、現在から振り返ると10年以上過去から知られていた旧聞に属することであるが、現在でも、さまざまな規模の、さまざまな事情の企業があり、未だに黎明期に位置する企業もある。

そういった企業は、先行企業の実績を踏まえて最新技術を利用し始められる優位性がある一方で、AI、コグニティブ(という名のエキスパートシステム)、クラウド、と言ったバズワードに翻弄されて、成熟する機会を逸している面もある。

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ITシステムにおける新製品の採用について

業務システムで新製品を採用するときには、以下の何れかのパターンがあるように思う。

  1. 業務要件があり、新製品で実装可能な場合。
  2. ベンダーの営業マターで新製品を売りたい場合。

上記は排他的なわけではなく、各々の比率の大小はあっても、両方の要素を含むことが普通と思う。逆に言うと、上記の何れか一方だけに偏っている場合は、何らかの無理が生汁可能性が高まると思う。

海外・国内での実績がまだ少ない製品の場合は、ベンダーの手厚いサポートを約束させて取り組むことで成功留守可能性が高まり、ユーザー企業は要件が実装できるし、ベンダーは成功実績を作れるしで、Win-Winの関係になる。

悲劇的であるのは、新製品を売った後のシステム実装するデリバリーフェーズでのサポート力が弱く、まともに実装できずに炎上する、なんとかサービスインまでこぎつけても利用企業が少なくて保守フェーズで十分なサポートを受けられない、といったことになる場合だ。

ユーザ企業側で新製品を採用する場合は、以下のことに注意する必要があると思う。

  1. 国内・海外での利用実績。
  2. 上記実績の規模・複雑さ。
  3. 製品開発・保守ベンダーのデリバリーフェーズでのサポート体制。
  4. 業界トレンドに沿っているか。

例えば、大企業での複数の実績がある製品であっても、まだ本業務サービス提供に至っていないかもしれないし、サービス提供後であったとしても間もないかもしれないし、企業規模としては大きくても、当該システムは小規模だったり、社内系のミッションクリティカルでないシステムにおいて限定的な機能を利用しているだけかもしれない。

新製品採用時は、同業同規模の他社実績が十分あるものを選択するか、先進性高いものを提供ベンダーによる手厚いサポートをつけて余裕のあるスケジュールで取り組むか、いずれの方針とするのかを、明確にして取り組むことが望ましいと思う。

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そういえばブログがあったことを思い出した

そういえばブログを持っていることを思い出した。

最後に記事を書いたのが2012年04月だから、ほぼ2年ぶり。

思えば年をとったものだけれども、またちょっと書くようにしてみようかと思い、とりあえず更新だけ。

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「旬魚菜酒処 中川」(蒲田)

JR/東急蒲田駅前の小料理屋。
うなぎ 藍の家」のビルの地下一階。

「味の山海里 口福」の料理人が独立して始めたとのこと。
「口福」に比べてお店はやや手狭になった。

元は「宗平(そうべい)」というお店の本店だったが、「宗平 西口店」は相変わらず「宗平」なので、こっちが「宗平 本店」になったのかな?もしくは、姉妹店の位置づけなんだと思う。



「口福」時代のフロア担当・客引きをしていたお母さんが相変わらず働いている。
「口福」ではメインが二つというのがインパクトあったが、こちらのお店は豚汁・ご飯お替り自由になって、インパクトは弱い。

まだ一度しか行ってないので、何度かランチに行って評価したいと思う。

旬魚菜酒処 中川
東京都大田区西蒲田7-27-5 City7 B1
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以下、「味の山海里 口福」の紹介時の記事。
--
JR/東急蒲田駅前の小料理屋。
細い方のアーケードを入ってすぐ左手の二階。

お母さんと若い板さんでやっており、ランチで訪問。
失礼ながら、居酒屋に毛が生えたくらいかと思って行ったので驚いた。

ここは良い店で応援したくなる。



ランチはたいていメインが2品らしい。ほかに、小鉢が一つに漬物と味噌汁。
この日は、鯛と大根の炊き合わせがどーんとあり、ミックスフライ、シラス丼、サーモン照り焼き、鯖照り焼きからどれかを選択。

サーモンと鯖は味が濃すぎたが、ご飯のお供としては許容範囲。
鯛と大根の炊き合わせが薄味で非常に美味。

良い店だと思う。また行きたい。

味の山海里 口福
03-3739-2029 東京都大田区西蒲田7-67-5 大黒ビル 2F
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「ファリダバッド」(蒲田)

JR/東急蒲田駅そばのインドカレー屋。
喫茶店みたいなきれいな店内。

ランチは3種。
丁寧なインドカレーだと思うけど、ちょっと焦げてることもあるような。
スパイス感は強くなく、あまり辛くはない。

夜は一品料理と、ランチでは出ないカレーが食べられる。
特にカレーがスパイス感が強くてとてもおいしい。潤沢にホールスパイスを使っている。
ナンもランチの時よりも美味しい気がするのは、注文を受けてから伸ばして焼くためかもしれない。



ランチも普通に美味しいが、夜の方が特徴があり好ましい。

ファリダバッド
03-3736-2811
東京都大田区蒲田5-43-6 1F

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「天味」(蒲田)

JR/東急蒲田駅そばの天ぷら屋。
駅前というにはやや離れており、大三元よりちょっと駅に近い。

カウンターとテーブル一卓の13席。小綺麗でお店の人の感じもいい、モダンな天ぷら屋。



ランチで訪問。
ランチは、てんぷら定食か天丼。それぞれ、並・上×かき揚げ付き・なしの4種類。上だとイカが穴子になるらしい。
ランチ時間帯から単品メニューも頼めるのかな。

カウンターに座れなかったのとイカが嫌いではないので天丼並をお願い。

シジミ汁、天丼、お新香
天丼並・かき揚げなし
天丼並・かき揚げ付き

天丼はウェットなタイプ。
良い火の通し方で美味しいと思うのだけど、よく言えば香ばしい、悪く言うとやや焦げっぽいのが気になった。

今度はカウンターでてんぷら定食をいただきたい。

13:00前に入ったのだがほぼ満席。食べている最中もひっきりなしにお客さんが来ていた。
すんなり入れたのはラッキーだった模様。

丁寧に揚げている良いお店だと思う。

てんぷら 天味 (テンプラテンミ)
03-3733-8960
東京都大田区西蒲田7-32-3 メゾンアストリア 1F
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『ゲド戦記』(監督:宮崎吾朗)

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駄作の呼び声高い、ジブリの『ゲド戦記』を観てみた。原作はアーシュラ・K. ル=グウィン。

原作の3巻『さいはての島へ』をベースに、1巻、3巻、4巻の登場人物とエピソード・設定をつぎはぎしている。

主要登場人物は、壮年期のゲドと、原作とはキャラクターが異なるがアレン。それと、テナーとテルー。あと、敵役としてクモ。

テルーが館に乗り込むまでは創意も見られるし、情景描写も丁寧で効果的で良いと思う(ややギクシャクした画面の切り替えもあるけど)。

が、テルーが館に乗り込んでからは、脚本・演出が破綻してると思う。総じて、エピソードを盛り込みすぎで急ぎすぎ。唐突感が半端ないし、悪いことに、登場人物の行動に合理性がなく、馬鹿にみえてしまう。特にクモが酷いが、「なんなの。。。」と。

アレンが救われる経緯も、『影との戦い』におけるゲドと表面的には似ているけど、軽いと思う。これだと全体が、「ゲド戦記」をモチーフにした"boy meets girl"ものに見えてしまう。

ル=グインの、映画に対する感想全文というのがWikiにあった(ジブリ映画「ゲド戦記」に対する原作者のコメント全文)。だいたい同感。

初監督作品ということでもあるし、全体としては駄作として好ましく観られた。

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『指輪物語』(J.R.R.トールキン)

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)
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The Lord of the Rings (LOTR), 1937-1949.

J.R.R.トールキン

J.R.R.トールキン(John Ronald Reuel Tolkien, 1892-1973)は、オックスフォード大学の英文学教授。家系としてはドイツ職人の家系らしい。『ナルニア国ものがたり』の作者であるC.S.ルイスとの親交でも知られるが、なによりも本作『指輪物語』の作者として知られる。

トールキンの構想としては、言語学・文献学の知見に基づいたイギリス神話の創生だそうだ。指輪物語の舞台は、彼の構想する架空の歴史の一部であり、ヨーロッパのはるか昔が舞台となっている。

新版と旧版

本作はファンタジーのエポック・メイキング、ハイ・ファンタジーの白眉。執筆は、『ホビットの冒険』(The Hobbit, 1937)上梓直後から始められたらしいが、第二次世界大戦をはさんで、初版本は、1954年から1955年までに三冊本として出版されたとのこと。これに先立つ1951年には、指輪物語とつじつまが合うように『ホビットの冒険』も改訂されたらしい。本作を皮切りに、ナルニア国物語、ゲド戦記などが紡がれた。

全訳本では、評論社から三部作が上下巻に分冊されたセットとして販売されていた。高校生の頃に購入して読んだのだが、今回購入したのは改訂訳の新版10巻セット。三部作構成は変わらないが、上1、上2、など、旧版から更に分冊され、訳文が読みやすく改められている。手元に旧版がないので比べられないが、印象としては、活字ポイントが小さく写植がつぶれていた旧版に比べて格段に読みやすかった。

原作の分割では次の通りで、初版では3冊の各々に2部ずつ収録されていたらしい。

  • 第1部「影の帰還」 The Return of the Shadow
  • 第2部「指輪の仲間」 The Fellowship of the Ring
  • 第3部「アイゼンガルドの反逆」 The Treason of Isengard
  • 第4部「モルドールへの旅」 The Journey to Mordor
  • 第5部「指輪戦争」The War of the Ring
  • 第6部「王の帰還」 The Return of the King

評論社から出版された、児童文学家の瀬田貞二訳および、その弟子にして初版共訳者の田中明子による改訂訳は、何れも三部構成となっており次の通り。

  • 旅の仲間(The Fellowship of the Ring (FOTR), 1954)
  • 二つの塔(The Two Towers (TTT), 1954)
  • 王の帰還(The Return of the King (ROTK), 1955)

新版が良いのは、読みやすさの他に、カバーを外した文庫本の表紙。元となった「西境の赤表紙本」と同じく赤い表紙で、中央にトールキンのモノグラムが印刷されている。

あらすじ

物語は、ホビットであるビルボ・バギンズ(Bilbo Baggins)の、往きて帰りし物語である『ホビットの冒険』後から始まる。舞台は中つ国(Middle-earth)、主人公はビルボの甥であるフロド・バギンズ(Frodo Baggins)。

他に、同じくホビットであるサム、ピピン(ペレグリン・トゥック)、メリー(メリアドク・ブランディバック)。特に、バギンズ家の庭師として随行したサムワイズ・ギャムジー(Samwise Gamgee)は、フロドの半身として最後まで指輪の旅を共にする。ホビット以外では、賢人団(イスタリ(Istari))の一人である魔法使いガンダルフ(Gandalf)、またの名をミスランディア(Mithrandir)、ドワーフのギムリ(Gimli)にエルフのレゴラス(Legolas)、人間の馳夫(Strider)ことアラゴルン二世(Aragorn II)。あと、アラゴルンが失われた王家の末裔であることを知らぬ、王不在の王都ミナス・ティリス(Minas Tirith)の執政家の長男ボロミア2世(Boromir II)。

ホビット庄(Shire)でフロドが、老齢となったビルボから金の指輪を受け継ぐところから始まる。実はその指輪は、指輪の王(Lord of the Rings)ことモルドールの冥王(Dark Lord of Mordor)であるサウロン(Sauron)の力が封じ込められたもので、他の偉大な指輪たちを支配する力の指輪だった。

再び台頭してきたサウロンの影が強まる暗い時代に、フロドがサウロンの目を恐れて指輪を携え、滅びの山(Amon Amarth)ことオロドルイン(Orodruin)で指輪を消滅させることを使命として出発し、旅の途中で上記の指輪の仲間と出会い、長い旅を共にしつつ、やがて離散するまでが、第一部である「旅の仲間」のあらすじとなる。

舞台の歴史

この物語の背景は数万年に及ぶ。

まず、最高神であるイルヴァタールがこの世界であるエアを創造する。エアのなかに地球であるアルダ(Arda)が作られ、アルダを管理するためにイルヴァタールの僕であるアイヌアの中でも力あるものが遣わされ、彼らはヴァラールと呼ばれる。エルフと人間を作ったのはイルヴァタールだが、例外的にドワーフはヴァラールの一人であるアウレにより創造されたという。

ところが、ヴァラールの中で最も力強き者であったメルコール(Melkor)は堕落してモルゴス(Morgoth)となり、遂にはエアレンディルとその妻エルウィングが組織したエルフと人間の同盟軍に滅ぼされて第一期が終わる。

第二期は、モルゴスの第一の下僕であったサウロン(Sauron)が台頭し、ギル=ガラドとエレンディルの同盟軍に肉体を滅ぼされて終わる。

第三期の終わりが指輪物語の時代となる。指輪物語は、肉体を滅ぼされたサウロンが、再び力をつけて西方の自由な民を脅かし始めたところから始まり、フロドによる指輪消滅の使命達成によって、サウロンが最終的に滅び去り、第三期が終わる。このとき、指輪の仲間であり、ヌーメノールの失われていた王家の末裔であるアラゴルンが、テルコンタール(Telcontar)王朝の初代上級王である「エルフの石」ことエレスサール(Elessar)王として戴冠し、人間以外の種族が消え去っていき、人間が支配する世界となるのが第四期となる。

現代は、この時代区分でいうと、第六紀の終わりから第七紀の始まりに当たるらしい。

感想

というわけで、諸々の設定が壮大で奥深く緻密なため、分からないことも多い。こういうところが伝説的作品となる要素なんだろう。物語の中の対称性や象徴を読み解く試みも多くあろう。

指輪物語で気になるのは、優生学的でレイシストなところ。もちろん、ヘブライ系神話も入っている。白い肌で金髪なのが上等の表現としてよく使われる。 まあ、昔のイギリスのインテリだからなとか、ファンタジーだから悪しきものは生まれついて悪しきもので、よきものは生まれからして高貴なものでということかなというくらいにしか思わんけども、欧米とかではどう思われるんだろう。

改訂訳の10巻セットの10巻目は、追補篇に充てられており、舞台となった中つ国の歴史と言語について説明されている。これを読むと、改めて読み直したくなってしまう。『指輪物語完全ガイド』というものもあるのでいいかもしれない。

あと、お子さんがいらっしゃる方には、ハードカバー版があるようなので、そちらを買い与えていただくのがよろしかろうと思う。

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