The Lord of the Rings (LOTR), 1937-1949.
J.R.R.トールキン
J.R.R.トールキン(John Ronald Reuel Tolkien, 1892-1973)は、オックスフォード大学の英文学教授。家系としてはドイツ職人の家系らしい。『ナルニア国ものがたり』の作者であるC.S.ルイスとの親交でも知られるが、なによりも本作『指輪物語』の作者として知られる。
トールキンの構想としては、言語学・文献学の知見に基づいたイギリス神話の創生だそうだ。指輪物語の舞台は、彼の構想する架空の歴史の一部であり、ヨーロッパのはるか昔が舞台となっている。
新版と旧版
本作はファンタジーのエポック・メイキング、ハイ・ファンタジーの白眉。執筆は、『ホビットの冒険』(The Hobbit, 1937)上梓直後から始められたらしいが、第二次世界大戦をはさんで、初版本は、1954年から1955年までに三冊本として出版されたとのこと。これに先立つ1951年には、指輪物語とつじつまが合うように『ホビットの冒険』も改訂されたらしい。本作を皮切りに、ナルニア国物語、ゲド戦記などが紡がれた。
全訳本では、評論社から三部作が上下巻に分冊されたセットとして販売されていた。高校生の頃に購入して読んだのだが、今回購入したのは改訂訳の新版10巻セット。三部作構成は変わらないが、上1、上2、など、旧版から更に分冊され、訳文が読みやすく改められている。手元に旧版がないので比べられないが、印象としては、活字ポイントが小さく写植がつぶれていた旧版に比べて格段に読みやすかった。
原作の分割では次の通りで、初版では3冊の各々に2部ずつ収録されていたらしい。
- 第1部「影の帰還」 The Return of the Shadow
- 第2部「指輪の仲間」 The Fellowship of the Ring
- 第3部「アイゼンガルドの反逆」 The Treason of Isengard
- 第4部「モルドールへの旅」 The Journey to Mordor
- 第5部「指輪戦争」The War of the Ring
- 第6部「王の帰還」 The Return of the King
評論社から出版された、児童文学家の瀬田貞二訳および、その弟子にして初版共訳者の田中明子による改訂訳は、何れも三部構成となっており次の通り。
- 旅の仲間(The Fellowship of the Ring (FOTR), 1954)
- 二つの塔(The Two Towers (TTT), 1954)
- 王の帰還(The Return of the King (ROTK), 1955)
新版が良いのは、読みやすさの他に、カバーを外した文庫本の表紙。元となった「西境の赤表紙本」と同じく赤い表紙で、中央にトールキンのモノグラムが印刷されている。
あらすじ
物語は、ホビットであるビルボ・バギンズ(Bilbo Baggins)の、往きて帰りし物語である『ホビットの冒険』後から始まる。舞台は中つ国(Middle-earth)、主人公はビルボの甥であるフロド・バギンズ(Frodo Baggins)。
他に、同じくホビットであるサム、ピピン(ペレグリン・トゥック)、メリー(メリアドク・ブランディバック)。特に、バギンズ家の庭師として随行したサムワイズ・ギャムジー(Samwise Gamgee)は、フロドの半身として最後まで指輪の旅を共にする。ホビット以外では、賢人団(イスタリ(Istari))の一人である魔法使いガンダルフ(Gandalf)、またの名をミスランディア(Mithrandir)、ドワーフのギムリ(Gimli)にエルフのレゴラス(Legolas)、人間の馳夫(Strider)ことアラゴルン二世(Aragorn II)。あと、アラゴルンが失われた王家の末裔であることを知らぬ、王不在の王都ミナス・ティリス(Minas Tirith)の執政家の長男ボロミア2世(Boromir II)。
ホビット庄(Shire)でフロドが、老齢となったビルボから金の指輪を受け継ぐところから始まる。実はその指輪は、指輪の王(Lord of the Rings)ことモルドールの冥王(Dark Lord of Mordor)であるサウロン(Sauron)の力が封じ込められたもので、他の偉大な指輪たちを支配する力の指輪だった。
再び台頭してきたサウロンの影が強まる暗い時代に、フロドがサウロンの目を恐れて指輪を携え、滅びの山(Amon Amarth)ことオロドルイン(Orodruin)で指輪を消滅させることを使命として出発し、旅の途中で上記の指輪の仲間と出会い、長い旅を共にしつつ、やがて離散するまでが、第一部である「旅の仲間」のあらすじとなる。
舞台の歴史
この物語の背景は数万年に及ぶ。
まず、最高神であるイルヴァタールがこの世界であるエアを創造する。エアのなかに地球であるアルダ(Arda)が作られ、アルダを管理するためにイルヴァタールの僕であるアイヌアの中でも力あるものが遣わされ、彼らはヴァラールと呼ばれる。エルフと人間を作ったのはイルヴァタールだが、例外的にドワーフはヴァラールの一人であるアウレにより創造されたという。
ところが、ヴァラールの中で最も力強き者であったメルコール(Melkor)は堕落してモルゴス(Morgoth)となり、遂にはエアレンディルとその妻エルウィングが組織したエルフと人間の同盟軍に滅ぼされて第一期が終わる。
第二期は、モルゴスの第一の下僕であったサウロン(Sauron)が台頭し、ギル=ガラドとエレンディルの同盟軍に肉体を滅ぼされて終わる。
第三期の終わりが指輪物語の時代となる。指輪物語は、肉体を滅ぼされたサウロンが、再び力をつけて西方の自由な民を脅かし始めたところから始まり、フロドによる指輪消滅の使命達成によって、サウロンが最終的に滅び去り、第三期が終わる。このとき、指輪の仲間であり、ヌーメノールの失われていた王家の末裔であるアラゴルンが、テルコンタール(Telcontar)王朝の初代上級王である「エルフの石」ことエレスサール(Elessar)王として戴冠し、人間以外の種族が消え去っていき、人間が支配する世界となるのが第四期となる。
現代は、この時代区分でいうと、第六紀の終わりから第七紀の始まりに当たるらしい。
感想
というわけで、諸々の設定が壮大で奥深く緻密なため、分からないことも多い。こういうところが伝説的作品となる要素なんだろう。物語の中の対称性や象徴を読み解く試みも多くあろう。
指輪物語で気になるのは、優生学的でレイシストなところ。もちろん、ヘブライ系神話も入っている。白い肌で金髪なのが上等の表現としてよく使われる。 まあ、昔のイギリスのインテリだからなとか、ファンタジーだから悪しきものは生まれついて悪しきもので、よきものは生まれからして高貴なものでということかなというくらいにしか思わんけども、欧米とかではどう思われるんだろう。
改訂訳の10巻セットの10巻目は、追補篇に充てられており、舞台となった中つ国の歴史と言語について説明されている。これを読むと、改めて読み直したくなってしまう。『指輪物語完全ガイド』というものもあるのでいいかもしれない。
あと、お子さんがいらっしゃる方には、ハードカバー版があるようなので、そちらを買い与えていただくのがよろしかろうと思う。


























