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『ゲド戦記』(アーシュラ・K. ル=グウィン)

ゲド戦記(6点6冊セット) (岩波少年文庫)
アーシュラ・K. ル=グウィン
岩波書店
売り上げランキング: 39988

The Earthsea Cycle, 1968-2001.

アーシュラ・K. ル=グウィン

西の良い魔女こと、ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin)のファンタジー・シリーズ。全六冊。

彼女は、ハイニッシュ・ユニバースを舞台としたSF作家として名高い。文化人類学・文化相対主義的価値観に基づいた緻密な世界観はSFの良心と云ってよい。本シリーズの舞台となるアースシーのシリーズは、ハイニッシュ・ユニバースものと並んで彼女の代表作となっている。彼女はまた、猫好きとも知られ、『空飛び猫』シリーズ(The Catwings Collection, 1988-)を村上春樹が翻訳して一時期話題となった。

経緯

一巻目の『影との戦い』のみ、岩波同時代ライブラリーに収録されている。

昔、河合隼雄さんの『影の現象学』で言及されていたのを切っ掛けに岩波同時代ライブラリー版を手に取り、非常に面白かったのだが、当時は、後続の巻が文庫・ソフトカバー版で出てなかったので、シリーズを通しては読んでいなかった。

というわけで、前から気になっていたものを、岩波少年文庫に全巻収録されてるのをボックスで購入して一気読み。

前期三部作が発表された後、シリーズは完結したかに思われていたが、寄せられる読者からの期待に応える形でポツポツと発表されたらしい(4巻目となる『帰還』(1990)が発表されたのは、前期三部作の最後となる『さいはての島』(1971)から18年後。それから再び筆を執るのは、そのまた7, 8年後だったと云う)。

舞台

シリーズを通して、舞台となるのは、魔法使いと竜の住む他島地域を中心としたアースシー。主人公はハイタカ(Sparrowhawk)ことゲド。

「ゲド」は天地創造の言葉でつけられた真の名。「ハイタカ」は産まれた時に親からつけられる通名。

この世界では、竜の言葉でもある天地創造の言葉(もしくは太古の言葉)により魔法が発動し、真の名前は元服の儀式の際、まじない師、あるいは正式な魔法使いから、おのずと天地創造の言葉で見出されて本人にのみ伝えられる。天地創造の言葉は語られれば現実となり、神聖文字で綴られれば力を持つ。真の名を伝えることは魂を委ねることになる。真の名は、魔法使いから力づくで明かされてしまう以外では、生前は最も親密な者にしか明かされない(一方で、死後は真の名が明かされ、真の名で言及される)。

この世界では、ハード語が話される多島海(アーキペラゴ)に褐色か赤褐色の肌の人種が住まい、北方の辺境カルガド帝国に白人が住んでいる。白人たちはアーキペラゴのハード語圏の住人からすると、未開で野蛮な種族で、境界地帯では古くから紛争が絶えない。

魔法使いたちは、太古の言葉で魔法を行使する一方で、魔法は宇宙の均衡を崩す恐れがあるものとしてみだりに使わない。そのため、派手な魔法戦があったりはしない。それは彼女のSFが派手なスペース・オペラではないのと同様に好ましい(ハミルトンのキャプテン・フューチャー・シリーズとかも面白いけど)。

シリーズ

ゲドは少年期に故郷ゴント島で羊飼いであったころに、村のまじない師に力を見いだされ、太古の言葉を教え魔法使いを養成する学院があるロークに渡り魔法使いとなる。本シリーズでは、前半三部作で、ゲドの少年期、青年期、壮年期に起こったイベントが語られる。後半はその後始末・世界観を詳細化するものとしてとして、ゲドは老人となりちょい役で登場する。

  1. 影との戦い(A Wizard of Earthsea, 1968)
  2. こわれた腕輪(The Tombs of Atuan, 1971)
  3. さいはての島へ(The Farthest Shore. 1972)
  4. 帰還(Tehanu: The Last Book of Earthsea, 1990)
  5. ドラゴンフライ(Tales from Earthsea, 2001. 短編集)
  6. アースシーの風(The Other Wind, 2001)

感想

前半三作品は素朴なファンタジー世界を背景に、神話的・心理的主題が象徴的に語られる。素朴で分かりやすい世界と物語に、主題が強く浮き上がり、ファンタジーの傑作。

後期の三冊(うち、一冊は短編集)は、前期三部先で児童書として素朴に作られた世界設定を、SF的・合理的に説明付る試みに見える。そのために、合理的・現実的な説明がなされる一方で、前期三部作に比べて矮小化され、物語の圧力・深度は弱まっていると思う。ただ、問題設定は、前期三部作の神話的・根源的なものに比べて表層的になる一方で現実的なものともなっており、シリーズ全体を通して、彼女の代表作と云って良い出来栄えだと思う。後期三冊は児童書ではない。

『影との戦い』に先行する短編もあるらしいのだが未読。でも、基本的には原作全巻読了したため、駄作の呼び声高いジブリの『ゲド戦記』も観てみた(2012/01/28)。評判どおりなかなかひどかった。

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