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業務システム、またはSoRとSoEについて

業務システムのことを、Systems of Record (SoR)と呼ぶことがある。これは、Systems of Engagement (SoE)に対する対比として作られた用語だ。

初出は、書籍『キャズム』の著者として有名なジェフリー・ムーア氏(Geoffrey Moore, 1946-)による、"Systems of Engagement and the Future of Enterprise IT" (AIIM.org, 2011)による。

業務システムは、一般に、入力されたデータを加工して保存し、次の入力のために保存されたデータを出力するという意味で、レコーダーの役割を主とする。そのためのデータ永続化機構がDBであり、DBに保管されたデータを読み込み、処理し、またDBへ保管するのがアプリケーションの主な役割になる。業務システムで最も重要視されるのは、データ・インテグリティ、つまりデータの整合性だ。

入力と出力の間で各種の変換処理が発生し、複数の永続化機構(主にDB)にデータを格納し、また複数の永続化機構からデータを読み出して変換するシステムにおいて、複数の永続化機構の間でデータの整合性が確保されていることは、最も重要なことだ。

一度データ整合性が破損すると、破損したデータを読み込んで変換した結果データが他の永続化機構に保存され、それがまた読み込まれて誤ったデータを出力して、また別の永続化機構に保管され、といった具合に、誤ったデータが次々に伝播し、正しいデータと誤ったデータを区別することができなくなってしまう。こうなってしまったら、データ破損前に取得したバックアップまで巻き戻って、業務をやり直す他はない。

社内業務であれば、最悪の場合、前日取得時のバックアップまで巻き戻ってやり直すこともできるだろうが、社外に提供したり受領したりするデータについては、そうそうやり直すことはできない。例えば、銀行業務の場合、ATMやネットバンクでの、銀行の顧客による入出金処理をやり直してもらうことは、ほぼ不可能だ。

これらの業務システムは、業務の必要に応じて構築するものであり、業態によっては競争力の源泉になるが、マーケティングの観点では、差別化の取り組みが必要になる。その重要な要素のひとつが「コミュニケーション」である。コミュニケーションベース、コラボレーションベースの動的な基盤を提供するシステムのことを"Systems of Engagement"と呼び、従来の、静的なデータ変換器・データ保管機構である"Systems of Record"と区別することが提唱された。

このような意味では、既存の業務システムにおいても、SoR的な機能とSoE的な機能とが、混在しているのが現状である。SoRとSoEという用語の強みは以下にあると思われる。

  • 既存のシステムが保管するデータに対して、SoE的なインタフェースを抽出して外部に公開する。
  • これらの機能を峻別して、各々の機能を、適したアジリティとSLAで実装できるようにする。

SoRに分類される機能は、データインテグリティとセキュリティを最上位の価値として、業務品質と業務効率とを向上させるように実装すべきだ。また、「一度作ったら十年塩漬け」といったものにしないために、業務継続性の根幹となる普遍的な部分と、大規模改修・フルスクラッチをせずとも、ある程度は柔軟に変更できる可変部分を含むアーキテクチャを採用すべきである。

SoEに分類される機能も、データインテグリティとセキュリティに気を配る必要があるが、コラボレーションしやすく、プライバシーを保護できるようにすることに注力する必要がある。そのためには、事業の継続に必要となるような、データインテグリティとセキュリティが必要な基幹的なデータは、SoEで扱うにしても、短時間にとどめて永続化せず、必要であれば別のSoRのシステムへ移動してしまうのが良い。

SoRは堅牢であることが必要であり、SoEは高いアジリティが必要である。SoRはEAに基づいて、Web ServiceベースのSOAを指向したが、SoEは、REST原則に基づいて実装されるマイクロサービスを指向する。そのための開発プロセスやメソドロジーは、必要に応じて別のものを採用する必要があるだろう。

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